九州電力は昨年11月、川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)と玄海原発(佐賀県玄海町)の使用済み燃料対策として、それぞれの敷地に乾式貯蔵施設の新設を検討していることを明らかにした。
九電の中村明・常務執行役員(64)は今年2月、参考人として呼ばれた薩摩川内市議会特別委員会で答えた。「安全対策の一環として社内的に検討している段階」。だが、新設時期は示さなかった。
使用済み燃料は高温で強い放射線を出す。国内の貯蔵法は建屋内のプールに保管し、ポンプで水を循環させて冷却するのが一般的。乾式貯蔵はプールで数年以上冷やした後、特殊な金属容器に移して自然の空気で冷却する。電気も水もいらない点が「安全性」につながるという見方がある。九電にとっては初めての導入になる。
東日本大震災で、東京電力福島第1原発の乾式設備は機能を維持できた。原子力規制委員会の田中俊一委員長は2014年秋、九電の瓜生道明社長(66)と意見交換した際、安全確保とセキュリティーの観点から積極的な導入を求めていた。
九電の乾式計画に対し、市民団体「ストップ川内原発! 3・11鹿児島実行委員会」は「川内が核のごみ捨て場になる」と懸念し、撤回を要請している。
政府は使用済み燃料を再処理して使う核燃料サイクルを掲げるが、再処理工場の稼働は延期の連続。再処理で発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定も遅々として進んでいないからだ。
さらに瓜生社長が「60年運転」に意欲を見せたことで、“一時保管”がなし崩しにされないか警戒感を強めた。乾式計画と60年運転が、川内原発の再稼働後に浮上した点も不信感に拍車を掛けた。
先の薩摩川内市議会特別委で、委員の一人は「九電にとって既定路線なのではないか」とただした。中村常務は「今、60年運転が視野に入っているわけではない」と説明。使用済み燃料は確実に搬出されるのか念押しされると、「再処理が日本の大方針」と答えた。
九電に対する不信の根底には、「再処理は政府の方針」と繰り返す人ごとのような対応や、乾式計画の時期的見通しを明らかにしないあいまいさがある。
川内原発の5キロ圏に位置する自治会会長、徳田勝章さん(78)は元川内原発次長。「九電から地元に説明はなく、乾式の良しあしは判断できない。時期も示さないようでは、いつまで保管することになるかも分からず、住民が不安を感じるのは当然」と指摘する。(南日本新聞社報道部・雪松博明)
川内原発 鹿児島県薩摩川内市久見崎町にある九州電力の加圧水型軽水炉。1号機が1984年、2号機は85年に営業運転を開始。出力はともに89万キロワット。新規制基準下で初めて1号機が2015年8月、2号機は10月に再稼働した。使用済み燃料は計888トンで貯蔵率約7割。1号機は残り約17年、2号機が約12年で満杯になるとみられる。
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