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Channel: 連載 from 沖縄&福井 –フクナワ
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仮設避難者「支援慣れ」自立の壁 揺れる原発立地県 東電福島事故から5年(1)

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 「仮設住宅がここにあるうちは、居続けるよ」。2月15日、福島県の中央部、大玉村にある「安達太良(あだたら)応急仮設住宅」。東京電力福島第1原発事故で全域が避難区域に指定された富岡町から避難中の男性(68)は、仮設住宅の集会所前のたき火に手をかざしながら話した。  すぐ隣に原発事故避難者向けの復興公営住宅が整備されたこともあり、この仮設住宅からは、既にほとんどの避難者が退去した。しかし男性は、ここを離れるつもりがない。  「復興公営住宅に行けば家賃を取られる。仮設住宅にいれば、金はかからない」  富岡町は2017年春に帰還を始めることを目標に避難指示解除の時期を国、県と協議するとしているが、男性は、町内の自宅に戻れるようになるまではまだまだ時間が必要だと言う。  こうも話した。「富岡に戻れば、賠償金がなくなってしまう」  東日本大震災と原発事故から5年。避難指示の解除に合わせて自宅に戻ったり、新天地に自宅を建てたりするなど、避難者はそれぞれの道を歩み、置かれている状況は個別化、多様化が著しい。  そんな中、「自分は悪くないのに一方的に避難させられた。だから行政、東京電力には何でもしてもらう」といった被害感情があまりにも強いために、自ら生活を切り開いていく「自立」に気持ちが向けられない避難者の存在が問題になっている。  福島県社会福祉協議会は14年4月、仮設住宅などを回り避難者の支援に当たる生活支援相談員に避難者の現状を尋ねた報告書をまとめた。仮設住宅の避難者の今後の自立生活を妨げる要因を聞いた設問(複数回答)で、「『支援慣れ』による自立意識の低下」を挙げた相談員は全体の42・7%に上り、「先が見通せない状況」(45・4%)に次いで多かった。  避難者に対しては月10万円などの賠償金のほか、医療費免除や高速道路無料などの支援が継続している。避難者を抱える自治体の社会福祉協議会の担当者は、避難前の自宅に帰れる時期がはっきりしないなど将来の生活が見通せないことが避難者の自立を難しくしていることを理解する一方で、支援に頼り切りになってしまっている「支援慣れ」した避難者の今後を懸念している。  男性は苦笑いと共につぶやき、こう強調した。「全部東電が悪いからこうなったんだ」(福島民友新聞社)   ×   ×   ×  東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故から、5年を迎えようとしている。原発の安全に関する新規制基準が策定され、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)や福井県の関西電力高浜原発が再稼働した。私たちは原発とどう向き合えばいいのか。原発が立地する地方新聞社が記事交換し、各地の現状を探る。  避難者の自立 政府は2016年度からの5年間を「復興・創生期間」と位置付け、被災地の自立につながる支援策や環境整備を講じるとしている。昨年は、福島第1原発事故で避難した相馬・双葉地域を中心に事業者の事業再開などを支援する組織「福島相双復興官民合同チーム」が活動を開始した。

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