
原子炉が自動停止した後、中央制御室で計器などを確認する運転員ら=29日午後2時4分、福井県高浜町田ノ浦の高浜原発(代表撮影)
「安全管理体制、安全意識の徹底を肝に銘じて、心を引き締めてやっていく」。4月25日、運転再開工程を説明するため福井県庁を訪れた関電の岩根茂樹社長は言葉に力を込め、決意を示した。
高浜3、4号機は司法判断によるストップだったが、4号機は2016年2月の再稼働の準備中に放射能を含む1次冷却水が漏れた。さらに、原子炉起動からわずか3日後に緊急停止し、県民に大きな不信感を与えた。
再稼働という“来る日”に備え関電は高浜3号機の原子炉を停止した16年3月から、弁の締め付けを確認するなど全数点検を実施。緊急停止を受け、設定値の見直しなど運用変更した機器については問題がないかチェックした。さらに休日や夜間の事故などさまざまな状況を想定した訓練は、16年度は延べ約2900回実施。社員や協力会社社員ら延べ約2万2千人が参加し、万一の事態に備える。
また、東京電力福島第1原発事故以降、長期停止の影響は関電の運転員にも及んでおり、高浜3、4号機合わせて約70人の運転員の中には、実際にプラントを操作したことのない社員もいるという。OBや経験者を講師に、16年度は1人当たり約90〜120時間の教育・訓練を行った。
一方、そんな中にあっても今年に入ってトラブルが発生した。1月20日には、高浜2号機の原子炉格納容器上部をドーム屋根で覆う安全対策工事に使うクレーンが倒れ、隣接する二つの建屋の屋根にアームが直撃した。暴風警報が出ていたにもかかわらず、クレーンのアームを折り畳んでいなかった。
2月の県原子力安全専門委員会では「原発が止まった状況で、安全意識が劣化しているのではないか。常に緊張感を持って、安全意識を全社で共有すべきだ」と批判の声が上がった。関電という巨大組織にあって、安全意識の浸透が末端まで行き届いていない現状が露呈した。
今回の運転再開は、まさに背水の陣。原子炉起動から100%出力までの間、現場常駐の人員を70人から100人に強化。原子力事業本部の常駐要員は7人から70人に増員する。高浜3、4号機とも、原子炉起動時から営業運転に入るまで、メーカーや協力会社、運転員ら約130人でチームを編成し、現場の一斉パトロールを実施することにしている。「これまでの反省を踏まえ、最善を尽くす」(関電)との認識だ。
原子力規制庁の西村正美・地域原子力規制総括調整官は「安全の第一の責任は事業者にある。起動、発電・送電開始などをしっかり確認していく」と話す。岩根社長が言うように「高浜3、4号機を安全に運転することで県民理解や信頼回復につなげる」ことができるか。信頼回復へゼロからの再出発の日は近づいている。